三津大敷株式会社 田中友吾さん
掲載日:2025/12/23
ユネスコ支援の世界ジオパークネットワークにより「世界ジオパーク」に認定されている高知県室戸市。黒潮などの自然の恩恵を受けて漁業が発展してきた室戸市には、大敷(おおしき)とも呼ばれる大型定置網を敷設する経営体が4つある。そのうちの1つ、三津大敷株式会社で船頭を担っているのが田中友吾さん(26歳)
大阪出身・大阪育ちの田中さんは、幼い頃から「海遊館」に何度も通っていたほどの生き物好きで、高校卒業後は水族館の飼育員を目指し大阪府内の専門学校へ進んだ。
その専門学校の研修で室戸市の「むろと廃校水族館」を訪れ、三津大敷の船にも初めて乗った。海の上で見た定置網漁は、ただ魚を追いかけるのではなく、海の流れと魚の動きを読み、網の入口に自然と入ってくるのを待つ“自然に寄り添う漁”だった。稚魚が逃げられる仕組みなど、環境に配慮したSDGsな漁法でもあり、 その光景が強く胸に残ったという。
この体験が胸に残り、進路に迷っていたころ、校内に貼られていた三津大敷のポスターが目に留まった。室戸の海で獲れる魚の種類の多さと、その色鮮やかさに心を動かされ、この海で働く未来を思い描くようになった。そして20歳で室戸へ移り住み、漁師としての生活が始まった。
田中さんの1日は、朝5時に起き、港で船に氷を積み込むところから始まる。
日の出とともに海へ出ると、仕掛けておいた大きな網を30分ほどかけて引き揚げる。
船の舵を握るのは船頭の田中さん。機材の管理や乗組員の安全にも気を配り、船員を取り仕切るトップリーダとして船をとりまとめている。
港に戻れば魚を種類ごとに分ける選別作業にとりかかる。
昼休憩を挟んで、午後はもう一度漁に出るか、定置網漁具の修理等の作業を行う。この日は網の修理が行われていたが、船の上の引き締まった空気が一変し、陸では年上の漁師たちが「友吾!」と声をかけ、笑い合いながら作業を進める時間が流れていた。
概ね定時出勤・定時退社が可能で、安定した給料が支払われる定置網漁業や養殖業で働く方々のことを「サラリーマン漁師」と呼ぶことがあり、田中さんもそのひとり。三津大敷は月給制で厚生年金や健康保険をはじめとする各種社会保険が整い、食事手当や住宅手当、家族手当などもある。漁師ならではの大漁手当もあり、田中さん曰く「たくさん獲れた日は、みんなのモチベーションが上がる」のだとか。
休日は土曜日が固定で、有給休暇のほかゴールデンウィークやお盆などの連休もしっかりとれる。結婚して二児のパパとなった今は、休みの日に家族と出かける時間が一番の楽しみになっているとか。また、市場価格で魚を買えるため、家族の食卓に地元の新鮮な魚が並ぶのも嬉しいポイント。「10月に多く獲れるアオリイカを母の誕生日に贈ったところ、とても喜ばれた」と、照れくさそうに話してくれた。
仕事の魅力を尋ねると、田中さんは「生き物好きにはたまらない仕事だ」と言う。室戸の海は豊かで、日々さまざまな生き物と出会う。魚だけでなく、イルカやジンベエザメ、時には深海魚のメガマウスに遭遇することもある。また、室戸でブランド化が進む「室戸春ぶり」のおいしさにも感動したとか。大阪の友人からも「魚を送って欲しい」と頼まれるほど評判が良く、室戸の魚のファンが増えつつあるという。
室戸の海で生き物と向き合い、世代を超えた仲間と働き、家族と暮らす日々。その実直な積み重ねこそが、田中さんにとっての“漁師という生き方”なのである。
田中さんからのメッセージ
「漁師という仕事に不安定な印象を持つ人は多い。しかし、三津大敷は会社として制度が整っており、真面目に働けば安定して収入が得られる。年齢に関係なく出世でき、頑張った分だけ給与も上がる。やりがいはかなりある!」








