九石大敷組合 笹岡祐貴さん
掲載日:2025/12/23
季節ごとに豊富な種類の魚貝類が水揚げされる魚の町「須崎市」。須崎魚市場に向かうと市場の花形「セリ人」の威勢のいい声が響いていた。声の主は28歳という異例の若さで花形に抜擢された笹岡祐貴さん(33歳)。
20代前半は、大阪で大手情報通信会社の営業をしていたが、家業の九石大敷組合三代目の父親から「仕事を手伝って欲しい」と頼まれUターン。現在は、九石大敷組合のブランドマネージャーや須崎釣漁業協同組合の参事を務める若手有望株だ。今では漁業のおもしろさにどっぷりはまっている笹岡さんだが、以前は「働く環境に抵抗があり、漁業には就きたくない」という思いがあったとか。しかし、漁や漁協の仕事に触れる内に、だんだんと心の中に変化が。その理由は「市場にはたくさんの人が集まるが、ここでは裏表のないまっすぐで人間らしいコミュニケーションが日々繰り広げられている。いつの間にかその時間が楽しみに変わり、今は刺激的な毎日を過ごしている」と、楽しそうに話してくれた。また、出会いは人だけでなく魚も。笹岡さん曰く、須崎市であがる魚種の豊富さは目を見張るものがあり、漁業歴12年以上経った今でも知らない魚に出会うのだとか。
そんな笹岡さんが現在積極的に取り組んでいるのは「販路開拓」。魚は神経締めで差別化を図り、都会の飲食店向けに営業活動を行っている。また、魚ではなくあえて組合自体をブランド化。九石大敷組合のオリジナルロゴを制作し、認知度向上やイメージアップに繋げている。2021年には漁師達の日常をTikTokやInstagramで配信し始め、TikTokのフォロワーは4万6千人を突破(2025年11月現在)。2026年には新たに自社のECサイトを開設するなど、デジタルやSNSを絡めて今の時代に合ったマーケティングを推進している。こうした取り組みは、魚の消費拡大はもとより、収入の安定化にもつながることが期待される。
九石大敷組合に所属する漁師は、主に定置網漁等の雇用型。江戸時代から行われているとされる定置網漁は漁の基礎を学ぶことができ、これから漁師になりたい方にはうってつけの漁法だ。天候を読む目、仲間との無駄のないやりとり、そして一瞬の判断が漁の成果を左右する。笹岡さんから見た船上は「我を出さないといけない瞬間がある。”生きるため”に一生懸命。それは海の上というだけでなく、人々の食を支える仕事だから。一度体験してみないとわからない格好よさと楽しさがある非日常な世界」なのだとか。
沖では引き締まった表情の漁師たちも、陸に戻れば穏やかな雰囲気に一変する。魚市場が休市する日曜日は、釣りやキャンプなどアウトドアを楽しむ漁師もいるとか。笹岡さん自身も日曜日には趣味のブラジリアン柔術にいそしんでいる。須崎市は県都へのアクセスもよく、豊かな自然と地元ならではの食も充実していて、観光地としても人気が高い立地だ。プライベートを充実させつつ、人々の健康や食を支える誇りある仕事にふれてみてはいかがだろう。
笹岡さんからのメッセージ
「何かしたいけれどやりたいことが見つからない人には、ぜひ一度覗いてもらいたい世界だ。やってみないとわからない楽しさと魅力が詰まっている。はまる人は10人に1人かもしれない。でも、その1人になった時に、信じられないほどのやりがいを感じられる」







